山形県東置賜郡高畠町日向洞窟遺跡西地区石器群の研究T

-縄文時代草創期の槍先形尖頭器を中心とする石器製作址の様相-


刊行についてのお知らせ


 さて、このたび上記の報告書を刊行致しました。日向洞窟遺跡西地区は山形県東置賜郡高畠町に位置する縄文時代草創期の大規模な石器製作址です。その東方約150mのところにある日向洞窟遺跡において、1955年に山形大学の柏倉亮吉氏を団長とする調査団によって発掘調査が行われ、縄文時代草創期研究の起点となり、牽引の役割を果てきたしたことは、つとに有名です。

 日向洞窟遺跡西地区では、1987〜1989年に高畠町教育委員会が主体となり、町道改良工事に伴って緊急調査が行われ、微隆起線文土器段階の膨大な数の石器が出土しました。発掘調査当初からその重要性は広く認識されており、その後、全国各地の博物館で開催された縄文時代草創期の特別展で展示されてきました。しかし、石器の具体的な分布状況や製作技術などの実態については、総合的に整理・検討される機会がありませんでした。

 その研究価値の高さに鑑み、佐川ゼミナールは高畠町教育委員会と山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館と連携し、2004〜2006年に日向洞窟遺跡西地区出土の縄文時代草創期石器の再整理と検討に取り組んで参りました。その結果、@少なくとも4カ所の石器集中区が認められ、遺物分布は調査区外の東西へさらに広がること、A石器の石材は米沢盆地の珪質頁岩を主体とし、槍先形尖頭器と石鏃という狩猟具が過半数を占めること、B槍先形尖頭器はほとんどが未製品や失敗品で、大量の完成品が遺跡外へ搬出されたこと、C遺跡には石核がほとんどなく、石鏃やエンドスクレイパーなどの小形石器は、槍先形尖頭器の製作過程で生じた剥片が利用されていたことなどが明らかとなりました。とくに、槍先形尖頭器の製作を基盤とする剥片素材供給システムは、東日本各地の縄文時代草創期石器群に認められ、後期旧石器時代から縄文時代への移行期の社会を理解していく上で、きわめて重要であると考えられます。

 以上の成果とともに豊富な実測図と写真、観察表を器種ごとにまとめた本報告書は、A4版、フルカラーの総ページ約140頁で、具体的には右の目次に掲げる内容から構成されています。自費出版のため、個人への配布には限界がありますので、心苦しいですが多くの皆様には、下記の要領でご購入いただくことになります。ご宣伝のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

2006年11月22日

編著者代表
東北学院大学文学部
教授・佐川 正敏
 <主な内容>
 第1章 調査・研究の経緯(佐川正敏)
 第2章 日向洞窟遺跡西地区の調査(井田秀和・鈴木雅)
       ・・・発掘調査の概略、基本層序と遺物出土状況
 第3章 草創期(VI層出土)の石器(佐川・鈴木)
       ・・・石器組成と各器種の解説、実測図とカラー写真
 第4章 考察
    1.日向洞窟遺跡西地区の槍先形尖頭器製作を
       技術基盤とする石器群と東日本における位置づけ(鈴木)
    2.日向洞窟遺跡西地区における
       石器製作のテクニック(大場正善)
 第5章 結語(佐川)
 附 章 日向洞窟遺跡西地区出土石器観察表 英文要旨

報告書1部の定価は、3,000円(送料込み)です。

代金(3,000円×購入部数)を下記の郵便振替口座へご送金ください。

郵便振替口座:02290−0−47046 (加入者名:佐川正敏)

 その際、通信欄に購入部数をご記入願います。


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