賀篭沢遺跡 2006年度発掘調査日誌

2006/08/01 21:43:00

作業内容
●山の学校の整備と生活物資搬入(午前)。
●発掘現場への機材搬入(午後)。
 調査区の設定(午後)
 昨年発見した石器ブロック2の範囲を確認するために、昨年度のトレンチ(M-16・N-16)の東隣りに1区、北隣りに2区を設定。
  ・1区:N-15defghi(1.5×2.5m)
  ・2区:O-15f・O-16ed(1×3m)
  ・旧トレンチ:M-16・N-16

新調査区
北より撮影。手前が1区、奥が2区となる。

作業風景
写真撮影のために、新調査区の周りをきれいにしている。



2006/08/02 23:09:26

現場作業 8:30〜17:00

作業内容
11:00、9名の考古学実習生(歴史学科2年生)が調査現場に到着し、6日間の実習が始まる。実際の考古学の発掘調査に参加し、体験を通して考古学というものを学んでもらう予定である。
旧トレンチ(M-16・N-16)を昨年度調査の補足のため、埋土を掘り下げる。
2区、1層の腐葉土を除去し、2層上面を検出。検出状況の写真撮影をおこなう。遺物の出土はない。


実習生に今年度の調査予定と調査現場を説明。説明ののち作業に参加する。


旧トレンチの埋め戻し土を除去し、5層上面を再検出。今後、石器ブロック1と石器ブロック2の堆積関係を確認する予定。また、5層上面の若干掘り下げもおこなう。

旧トレンチの作業風景
旧トレンチの掘り下げの作業風景。

2区の2層上面検出状況
西から2区を撮影。2層上面を検出するが、とくに遺物はみつからなかった。



2006/08/03 23:24:21

作業内容
昨日残った旧トレンチの埋め戻し土を除去。同時に、東壁の検討のために、L-16hへ拡張(埋め戻し土の除去)し、またN-16iの一部(50×50cm程度)を深掘りして、旧トレンチ内の5層以下の堆積について検討をおこなった。
1区の発掘を開始し、石器ブロック2の東への拡がりの確認をおこなう。現在、2層より下位の上面を検出中。
2区では2層より下位の上面を検出中。明日以降、石器ブロック2の北への拡がりを確認する予定である。
発掘調査現場内の清掃作業をおこなった。


写真左手前が旧トレンチ内のL-16hで、右奥がN-16iとなる。深掘りでは、6層を掘り下げている途中である。


旧トレンチの5層上面を再度掘り進めた結果、33点の玉髄製石器が発見された。このことから、石器ブロック1と2は、石器の垂直分布がまだ広がりをみせることがわかった。


1区の1層を掘り上げた結果、トレンチ中央南寄りで近現代に打ち込まれたと考えられる丸太杭の址を検出。過去の調査において、数ヶ所のトレンチで発見された同様の丸太杭址と畑の畝址と一連のものとみられ、遺跡が最近まで畑であったことをものがたっている。ただし、耕作による攪乱は2層までで、3層以降はほとんど攪乱を受けていない。
1層からは土器片が3点と礫石器が1点、2層からは土器片が9点と玉髄製石器が4点発見された。


2区の2層から土器片が12点と玉髄製石器が6点発見された。トレンチの南側と東側では、2層の下位層の上面が検出された。


現場スナップ。



2006/08/04 20:59:52

作業内容
旧トレンチの清掃の後、石器出土状況の写真撮影をおこなう。撮影後、出土石器の位置を記録し、遺物を取り上げる。これらの作業がおわった後、5層の完掘を目指し掘り下げをおこなう。
1区、2区ともに2層を完掘し、4層上面を検出する。4層上面を検出した後、トレンチ内の清掃をおこない、写真撮影をする。

旧トレンチの5層上面の石器出土状況
旧トレンチのほぼ中央、M-16efhiで石器が集中して発見された。昨年の見解では、この付近に石器分布の空白部があることから、石器ブロック1と石器ブロック2を分ける境界と考えてきた。しかし、今回空白部を埋めるように石器分布を検出したことから、石器ブロック1と石器ブロック2は境界がなく、本来一つの大きな石器の密集部であることを確認した。本日、位置を記録した石器の点数は、5層上面より玉髄製石器がL-16の5層上部で1点、M-16の4層で1点と5層上部で35点、N-16の4層で1点と5層上部で25点である。

旧トレンチ内の土層の層序を検討した結果、調査現場旧トレンチより南側の層序と若干異なることがわかった。旧トレンチの2層の下から、3層と4層起源の粘土および近現代の表土が混じる耕作土(2b層)の地層と、近現代の表土(2c層)というこれまでに確認されなかった地層があった。2b層はM-16西側でのみ確認された。2c層はM-16から始まり調査現場の北西を覆うが、N-16の東半分でなくなることがわかった。

旧トレンチ出土の稜付き石刃
N-16dの5層上面において稜付き石刃が発見された。これまで採集または出土した石刃のなかで最長のものである。このほか5層上面では、剥片や石刃などを発見した。

1区、4層上面の検出状況

2区、4層上面の検出状況
1区と2区では2層を完掘し、清掃した後写真撮影をおこなった。1区と2区では3層がなく、2層の次の地層がすぐに4層となる。調査現場の北側で3層がなくなることは、2003年度の調査のP-13深掘り調査区と、旧トレンチでも確認している。なお、2区の4層上面は、樹木などの植物による攪乱によって、若干凹凸が著しい。遺物は、1区の2層より土器片20点と石器が8点、2区の2層より土器片が6点と石器が4点、攪乱した土より土器片が2点と石器が1点を発見した。

調査の1コマ
調査での1コマ。



2006/08/05 15:20:01

作業内容
旧トレンチ5層上部の石器出土状況の写真撮影と、出土位置の記録。記録して石器を取り上げた後、再び5層の掘り下げをおこなう。3cm掘り下げた段階で、再び出土位置の記録をおこなう。
2区、3区では、昨日に引き続き4層を掘り下げ、5層上面の検出を目指す。

旧トレンチの5層上部の石器出土状況
現在、5層上面から5cm程度掘り下げているが、M-16efhi付近から今日まで100点以上の石器が出土している。このM-16efhi付近については、依然として石器が見つかるので、明日以降も引き続きこの付近の掘り下げをおこなう。なお、M-16efhiより北側は石器の出土量がかなり少なく、これらの場所について石器包含層の大部分を掘り上げたものとみられる。

旧トレンチ5層上部出土の彫刻刀形石器
旧トレンチからは石刃、石刃核、彫刻刀形石器などが出土している。

1区4層の遺物出土状況
2区4層掘り下げの作業風景
1区、2区4層上面から20cm程度、旧トレンチで石器が多量に出土している同等のレベルまで掘り下げたが、石器の出土点数は旧トレンチに比べて格段に少ない。1区で出土した遺物は、4層から土器が7点、石器が8点出土している。2区で出土した遺物は、2層で土器が7点、4層で石器が11点出土した。なお、2区の4層については、植物による攪乱が著しく、攪乱した土から土器が1点出土している。

現場ミーティング
毎日、撤収前には現場ミーティングをおこない、その日の調査と明日以降の作業について話し合っている。

来跡者(敬称略)
高原 要輔  学校法人石川高校教諭(調査参加)
金澤 重憲  同上      1年 (調査参加)



2006/08/06 00:38:10

作業内容
旧トレンチでは5層出土の主な石器の写真撮影をおこない、出土位置の記録をおこなう。記録した後、5層をさらに掘り進める。
1区では5層上面を検出。石器出土状況と主な石器個別の写真撮影をおこない、石器の出土位置を記録する。記録した後、出土石器を取り上げる。
2区では、4層の石器出土状況の写真撮影と出土位置を記録のした後、出土石器を取り上げる。その後、4層をさらに掘り下げ、5層上面を検出。この際に出土した石器にかんしても、撮影と記録の後に取り上げている。

旧トレンチ5層掘り下げの様子
旧トレンチの作業風景。昨年度の調査結果を考慮すると、石器の密集区はM・N-16となる。

1区5層上面の検出状況
1区でも出土石器の量が、旧トレンチに対してかなり少ない。この付近が石器集中の端部にあたる可能性がある。4層中から石器が5点、5層上面から石器が3点出土している。

2区5層上面の検出状況
2区では出土石器の量が、旧トレンチに対して少なく、本日まで10点前後の石器がみつかっている。

来跡者(敬称略)
上野  晃平 北海道大学理学研究院技術部(佐川ゼミOB・調査参加)
内田  仁  加藤建設(株)埋蔵文化財調査部(調査参加)
黒田  篤史 岩手県遠野市教育委員会(辻ゼミOB・調査参加)
佐久間 光平 宮城県文化財保護課
鈴木  雅  蔵王町教育委員会(佐川ゼミOB・調査参加)
高橋  健寿
三浦  実  栗原市教育委員会(佐川ゼミOB・調査参加)



2006/08/07 08:13:54

作業内容
現場での作業は午前で終了し、午後は休息。
旧トレンチでは、昨日まで出土した石器に遺物ナンバーをふり、そのあと写真撮影のために清掃をおこなう。清掃の土壌については、小グリットごとにサンプリングし、今後チップなどの微細遺物を検出するため水洗別作業をおこなう予定。写真撮影の後、遺物の出土位置を記録し、同時に遺物出土の個別写真を取り、取り上げもおこなう。本日まで、旧トレンチでは石器が200点以上見つかっている。
1・2区では、平面図と5層上面のコンターマップ(等高線図)の作成。作成終了後、5層上面を5cm程度掘り下げをおこなう。
宿舎では、これまで出土した遺物の洗浄と、機材の手入れをおこなう。
本日、前半日程で参加の実習生が帰仙し、また新たに後半日程参加の実習生3人が宿舎に到着する。

サンプリングの様子
土壌の水洗別作業により、石器製作の際にでる微細なチップ(1mm以下の砕片)を回収する予定。

黒耀石製の石刃核
旧トレンチ5層上部からは、5cm大の黒耀石製の石刃核が見つかっている。黒耀石は、表面の肉眼観察から遺跡から、北西に約4kmはなれた谷山産のものと思われる。

1・2区の図面作成
コンターマップ(等高線図)を作成し、5層の傾斜について記録を残す。

1・2区の5層掘り下げの様子
本日、1・2区では5層上部から1区で石器が1点、2区で石器が2点出土している。旧トレンチの石器分布に比べて、その出土量はかなり少ない。

調査参加者の集合写真
今年度の調査では、調査参加者全員が一堂に会して記念写真を撮った。

来跡者(敬称略)
上野  晃平 北海道大学理学研究院技術部(佐川ゼミOB・調査参加)



2006/08/08 21:52:33

作業内容
台風接近のため、作業ペースを上げる。
旧トレンチでは昨日に引き続き、遺物の出土位置を記録し、取り上げをおこなう。取り上げた後、再び5層の掘り下げを進める。下岡氏により旧トレンチ北西角で、5層上部・下部と6層の土層サンプリングをおこない、5層中部と6層にルミネッセンス年代測定のために検定棒を埋設。
1区では、5層上部を掘り上げ、土層断面の線引きをおこなう。線引き後、清掃して5層上部の検出状況の写真を撮影する。撮影後、5層上部の遺物の位置を記録し取り上げて、北・東壁の断面図を作成し、作業終了。
2区では、5層上部を掘り上げ、清掃して5層上部の検出状況の写真を撮影する。撮影後、5層上部の遺物の位置を記録し取り上げて、北・東・西壁の断面図を作成し、作業終了。
下岡氏と大場は、安達愛島軽石(Ac-Md)の噴出年代について再測定するため、示準露頭である川崎町安達に向かう。

検定棒の埋設作業
今回、石器集中部の近くで、ルミネッセンス年代測定のための土層サンプリングと検定棒の埋設をおこなう。

1区5層上部検出状況
1区最終検出面(5層上部)。1区では、4・5層から16点の石器が見つかっている。

2区5層上面の検出状況
2区最終検出面(5層上部)。2区では、4・5層から20点の石器が見つかっている。1・2区は、旧トレンチ付近を中心にした石器集中部の縁辺付近にあたる可能性がある。

来跡者(敬称略)
石黒 伸一朗 (村田町歴史みらい館)
下岡 順直  (日本学術振興会特別研究員PD:年代学・古文化財科学 ・調査参加)



2006/08/09 23:13:23

作業内容
引き続き台風接近のため、作業ペースを上げる。
旧トレンチでは、昨日に引き続き5層の掘り下げ、6層上面の検出を目指す。出土遺物位置の記録と取り上げ、東・西・南・北壁の土層断面図の作成も、同時平行でおこなう。今日まで、500点以上の石器がみつかった。
1・2区は、埋め戻して調査終了。

旧トレンチの作業風景1
出土位置の記録と掘り下げを同時平行で進める。

旧トレンチの作業風景2
土層断面図の作成も同時に作業。

旧トレンチ6層上面の検出状況
本日の作業終了時の旧トレンチ。トレンチのほぼ全体に6層上面が検出されている。現在、石器の出土はM-16h付近に集中しており、とくにこの付近ではチップ、炭化物が多くみつかっている。

1・2区の埋め戻し
1・2区の埋め戻しの作業風景。

作業が終わって…
今日の作業終了後の夕焼け。台風の直撃は避けられたから、空に流れる雲がなおさら綺麗にみえる…。

来跡者(敬称略)
伊東 裕輔  (佐川ゼミOB・調査参加)
下岡 順直  (日本学術振興会特別研究員PD:年代学・古文化財科学 ・調査参加)



2006/08/10 23:36:29

作業内容
旧トレンチにおいて、昨日出土した遺物の出土位置の記録と取り上げをおこない、5層下部を掘り下げる。本日の掘り下げでは、石器の出土量がM-16e・hで濃密となり、その周辺で散漫な分布になる。また、M-16e・h付近ではチップが密集していることから、チップ回収のため、旧トレンチ全体を3cm程度掘り下げた土を小グリットごとに土壌をサンプリング。なお、M-16e・h付近は炭化物も密集する。
旧トレンチの土層注記の補足をおこなう。
旧トレンチ全体で6層上面を検出したのち、旧トレンチの平面図と6層上面のコンターマップ(等高線図)の作成。その後、全面的に清掃して、旧トレンチ平面と土層断面(東・西・南・北)の写真撮影をおこなう。

旧トレンチ5層下部の掘り下げ
作業風景。

M-16e・hのチップの密集状況
5層下部でのチップと炭化物は、M-16e・hを中心として濃密に分布する。

平面図作成の作業風景
旧トレンチの平面図とコンターマップの作成。図面の書き方について、実際の作業を通して学ぶ。

5層下部のサンプリング
旧トレンチのサンプリング風景。今後、水洗別作業によりチップを回収し、小グリットごとの分布密度について検討する。

現場スナップ
サンプリングの作業風景。

来跡者(敬称略)
伊東 裕輔  (佐川ゼミOB・調査参加)



2006/08/11 00:37:01

作業内容
昨日のサンプリングの際に、M-16e・h以外で石器が出土しないことから、サンプリングする位置をこのM-16e・hに限定する。3cm程度掘り下げた段階でM-16eにチップなどの石器が集中し、サンプリングする位置をさらにこのM-16eにしぼる。M-16eを3cm程度掘り下げ、M-16e東壁寄り中央にのみ、ごく狭い範囲に石器が密集することが判明する。平面上で落ち込みなどの輪郭の確認は、6層上面の精査の段階ではできなかった。しかし、石器の出土状況は、落ち込みなどに石器が溜まっている状況を示す。したがって、落ち込みなどの有無を確認するために、M-16b・e・hの東壁寄りに幅20cmの小トレンチを設け、土層の堆積状況を再度検討する。7層上面まで掘り下げた後、土層断面を線引きし、写真撮影。また、断面図と平面図に掘り進んだ部分を書き足しをおこなう。なお、今回の調査において旧トレンチで出土し、その位置を記録した石器は600点以上となる。
旧トレンチの土層断面図、土層注記、平面図の書き足しと、旧トレンチ北側の埋め戻しを同時平行でおこなう。
調査終了の前日なので、一部の機材を本校へ運送し、宿舎の整理をおこなう。

平面図、断面図などの書き足し
旧トレンチの下場、サンプリングした位置などを書き足す。

旧トレンチの埋め戻し
サンプリングや書き足しなどの作業が終わった旧トレンチ北側を埋め戻す。

M-16e石器出土状況
本日1度目のサンプリングを終えた段階。M-16eに石器が集中している。

土層検討のための小トレンチ
M-16b・e・h付近の土層の堆積状況を調べるために、壁に沿って小トレンチを設ける。

妙案!
移植ごてを利用した蚊取り線香の灰受け。発掘道具を使ったナイスなアイディア!ちなみに、この発案者は写真の奥。

来跡者(敬称略)
伊東 裕輔  (佐川ゼミOB・調査参加)



2006/08/12 22:28:19

作業内容
3名は宿舎に残り、宿舎の整理。ほかは、発掘現場での埋め戻し作業と現場の撤収。
M・N-16東壁の土層をもう一度検討したのち、旧トレンチの埋め戻し作業に入る。埋め戻し完了後、埋め戻した状況を写真に収め、現場で使用した機材の搬出をおこなう。午前中のうちに現場での作業をすべて完了する。
昼食と入浴を済ませたのち、機材を積み込み、宿舎の清掃をして、15時までに山の学校を撤収する。

旧トレンチ東壁土層断面
M-16eのチップの密集は、東壁の土層断面の観察により、自然の落ち込みに溜まったものと判断される。

埋め戻し作業
埋め戻しの作業風景。

現場の撤収作業
埋め戻しが完了したのち、発掘機材を整理。

撤収完了!
撤収した後の賀篭沢遺跡。本ゼミナールの4年におよぶ賀篭沢遺跡の発掘調査は、ひとまず終了する。今後とも、出土石器の分析やトゥールの供給先となった遺跡の探索など、在地型(玉髄)原産地遺跡である新川流域遺跡群の実態解明にむけて、賀篭沢遺跡の研究は続く。

「山の学校」からの撤収
築120年の古民家を利用した「山の学校」。囲炉裏端のまわりでは、いつも話に花が咲いた。そんな「山の学校」とも、しばしの別れ…。

来跡者(敬称略)
渋谷 孝雄  (財)山形県埋蔵文化財センター